カテゴリー : 2007年 12月

二都物語 下巻

Facebook にシェア
[`yahoo` not found]
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`fc2` not found]
[`livedoor` not found]
[`friendfeed` not found]

 読了して改めて思ったが、日本ではこの作品がディケンズの代表作になっているのが不思議だ。解説の中野好夫も書いているが、後期作品の割には『ご都合主義』に凝り固まっている感じ。マダム・ドファルジュの最期しかり、クランチャーの悔悟しかり、そしてドルトル・マネットの退行しかり。これが『荒涼館』だったら、グチャグチャのままさらに混迷させる力技も見せてくれただろうに……と思う。
 ただ、カートンとお針子の静かなやり取りは読み応えがある。哀感と諦観が組み合わさって、身代わりとして死にゆく男と冤罪の少女が一対の偶像に昇華していく様子は圧巻。死刑執行の直前まで経験したドストエフスキーのような異様なリアリティは薄いものの、情景とストーリーを巧みに混ぜ込んでいる。ギロチンによる死刑執行に沸き立つ群衆からカートンとお針子を見ていたと思うと、あっという間に視点が切り替わって、二人だけの緊密な交感にフォーカスしたり。ペンが踊るように走っていて、このシーンは何度読んでも飽きることがない。もう少し大時代な筆致でなければ……と思ってしまうのだが、これは現代人の驕りかも知れない。

ニ都物語 上巻

Facebook にシェア
[`yahoo` not found]
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`fc2` not found]
[`livedoor` not found]
[`friendfeed` not found]

 何故か書棚からなくなっていたので、改めて買い直して読んでいる。これが2度目になるが、最初に読んでから10年以上経過しているので初読に近い。
 フランス革命に巻き込まれたドクトル・マネットが中心になるが、今回は『モンテ・クリスト伯』(1846年)を読んでいたので影響がよく判った。チャールズ・ダーニー、ルーシー・マネットは余り印象がなかったが、今回もディケンズの手駒っぽさが消えない。ストライバーとシドニー・カートンのコンビは、『OMF』のライトウッドとレイバーンに似ている(4人とも弁護士)。ただ、ライトウッドが善人なのに対してストライバーは世俗的な小悪人。
 フランス革命の描写については、歴史的に古臭い解釈をしているためかチグハグ感が大きい。最近の研究では、フランス革命によってかえって国民経済は困窮したというデータも存在する。ディケンズは歴史作家ではなかったという証左ではあるが、やはり少し残念。
 脇役連ではミスター・ロリーがとてもグッド。自らを「事務屋」と称しつつも人情味を発揮し、銀行員としての体裁と人間性を両立する。横柄なストライバーがルーシーへ求婚しようとするのを、上手に回避する件はディケンズならではの妙味だ。引き続き下巻へ……。