カテゴリー : 2008年 7月

ピクウィック・クラブ 上巻


 ディケンズ最初の長編。この連載小説が始まって世界は大衆小説を知ることとなったという伝説の作品だが、実は1回しか読んでいない。何故なら読みづらかったから。セルバンテスの『ドン・キホーテ』ほど古い文体ではないものの、後のディケンズ作品から見ると非常に回りくどくて長ったらしい。
 ディケンズの筆力・企画力が奔放で、コンビを組まされた画家のロバート・シーモアは自殺してしまった。当時は絵がメインでそれに短文が添えられるのが通常だった。出版社もそのような狙いを持っていたそうだ。ところが、駆け出しの24歳は妥協をしなかった。
 とはいえ、サム・ウェラーという登場人物が出てくるまでは人気もなかったらしい。
 女を口説けないカサノバ『タップマン』、運動音痴のスポーツマン『ウィンクル』、文才のない詩人『スノッドグラース』が脇を固め、偉大なるお人好し『ピクウィック』がイギリス国内を旅行するというのが当初の狙い。で、ディケンズは最初から画家を食ってしまうつもりで『裏ピクウィック』みたいな悪の化身を用意した。それが腹黒い好人物『ジングル』である。
 サムの人気が出てからは、ジングルの相方として『トロッター』という悪の召使を繰り出してきた。本当に筋書きのないドラマで、行き当たりばったりである。後期作品が好きな私は敬遠していたのだが、読んでみると意外と面白かった。
 古い形式なので作中作として様々な短編小説が読めたのもよかった。やっぱりこの溢れるような文体がディケンズの本領なのだろう。後期好きには少し悔しいところ。