骨董屋 下巻


 ディケンズの長編としては、比較的短い作品ではあるが……かなり読み足りない感じがあった。キットが冤罪を晴らしてネルに会いに行くくだりはそれなりに追い込みが感じられて楽しかったのだが、オリバー・ツイストのほうが迫力はあった。この辺りにも、躍動感溢れる前期作品と重厚な後期作品の合いの子さが感じられる。
 天使のようなネルよりも、公爵夫人やバーバラのほうが余程神々しさを感じてしまう。クイルプの怪人ぶりよりも、ブラース兄妹のほうが悪意を感じてしまうようなものか。クイルプは陰謀の名手な筈が、後半はグロテスクさを強調し過ぎて興醒め。ホラー映画で魔物が姿を顕わすと間抜けになってしまうような感じかも知れない。
 もうちょっとタイトな結末が希望だが、これはこれで楽しめた。やはりディケンズは凄い。しかしネリーは魅力がないことを再確認。好みの問題もあるだろうけど、公爵夫人が一番タフで可愛らしい造形になっていた。エイミー・ドリットよりも女性の勇猛さや狡猾さが表われている。

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