『漂流巌流島』


創元推理文庫の『漂流巌流島』(高井忍著)を読んだ。主人公が脚本家の4話もので、それぞれ、巌流島の決闘・赤穂浪士の討ち入り・池田屋事件・鍵屋の辻の仇討ちがモチーフとなっている。

ひょんなことから素人歴史研究家が矛盾に気づき、様々な視点から解明を試みる、というのはジョセフィン・ティーの『時の娘』と同じ構成(当サイトのスローガンである「TRUTH IS THE DAUGHTER OF TIME」もこの作品から援用している)。

4作の中では、赤穂浪士討ち入りが最も興味深かった。浅野長矩の傷害事件だけを取り上げるのではなく、他の江戸城内の刃傷沙汰(細川宗孝が傷害致死となった件)と並べて検証している点は奥が深い。喧嘩両成敗の語義が、非武士と武士の間で異なっていたことに言及しているのもポイントが高かった。

巌流島と鍵屋の辻は、推理物としてはなかなかだが歴史上の整合性を考えると、作者が提示した結末は必然性に欠ける気がする。一番残念だったのが、池田屋事件の推理。作者の新撰組への思い入れは感じるものの、蓋然性にすら乏しい筋立てで、謀略に寄り過ぎではないか。謀略でもいいのだが、冒頭で提示された吉田稔麿の一件を深追いすべきじゃないかと……。

とはいえ歴史部分の叙述も平明でテンポがよく、佳作であることに違いはない(歴史物というよりは推理物として読んだほうがいい)。

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