カテゴリー : 2007年 10月

骨董屋 上巻


 ちくま文庫、北川悌二訳。この作品は結構苦手で、一読はしているがその後3回ほど読みかけで放置していた。ネルへの感情移入ができないので、現在でも読んでいてしんどい。ネルは自業自得だと思ってしまう。恐らく、私には「肉親のために献身する」という美徳が根本的に欠如しているのだろう。
 ちょうど、前期と後期の中間ぐらいの作風なのも中途半端で思い入れが湧かないのかと思われる。行き当たりばったりな筋運びなのだが、人物描写を含めて踊るような筆致ではなく技巧派への転換が見られる。チグハグさを感じてしまう。
 それと翻訳が私と合わない。会話はいいのだが、風景描写は翻訳が厳しい。直訳寄り過ぎる。
 ストーリーとしては悲劇の少女というありがちな展開。ただ、言われるほどネルは純粋じゃないような気がしている。状況に流されることで責任をとっていないんじゃないかと思えている。
 前回読んだ時よりも、悪役クイルプが面白い。エネルギッシュで狡猾ではあるのだが、21世紀の現実社会から見たら、さほどの悪役とは思えなかった。欲望に一直線の、単純で愛すべきキャラクターではないか。
 解説を読んで思い出したが、ディック(リチャード・スウィヴェラー)と女中『公爵夫人』のネタがあった。この話は下巻に向けてとても楽しみである。私の好きなリトル・ドリットの原型が感じられる。何故忘れていたのか不思議。

長編作品一覧


原題 邦題 略称 刊行年
Sketches by Boz ボズのスケッチ集 SB 1836
Pickwick Papers ピクウィック・ペイパーズ PP 1836-37
Oliver Twist オリバー・ツイスト OT 1837-39
Nicholas Nickleby ニコラス・ニクルビー NN 1838-39
The Old Curiosity Shop 骨董屋 OCS 1840-41
Barnaby Rudge バーナビー・ラッジ BR 1841
Martin Chuzzlewit マーチン・チャズルウィット MR 1843-44
Dombey and Son ドンビー父子 D&S 1846-48
David Copperfield デイビッド・コパーフィールド DC 1849-50
Break House 荒涼館 BH 1851-53
Hard Times ハード・タイムズ HT 1854
Little Dorrit リトル・ドリット LD 1855-57
Great Expectations 大いなる遺産 GE 1860-61
Our Mutual Friends われらの互いの友 OMF 1864-65
Mystery of Edwin Drood エドウィン・ドルードの謎 MED 1869-